判例紹介
平成20年4月16日判決滞納水道料金及び電気料金を区分所有者の特定承継人に対して請求できるか
- 概要
【裁判所】大阪高等裁判所(上告審)
管理規約には,「専有部分において使用した公共料金を支払期日までに支払わなければならない。」という規定がある。前区分所有者が水道料金及び電気料金を滞納していたところ,これを買受けた承継人が現れたため,区分所有法8条に基づき,滞納水道料金及び電気料金を承継人に請求することができるか。
- 問題の所在
- 区分所有法30条1項は,「建物・・・の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項」についてのみ管理規約で定めることができると規定している。専有部分において使用された水道料金や電気料金は,区分所有者相互間において管理・使用を調整するために必要な事項とはいえないので,水道料金や電気料金を管理規約で規定することはできないのではないか。
- 判旨と解説
判決は,水道料金や電気料金は,専ら専有部分において消費したものの料金であり,区分所有者全体に影響を及ぼすものと言えないので,原則として,管理規約で定めることはできないとする。
もっとも,判決は,例外的に「特段の事情」があれば,管理規約で定めることができるとしているところ,本件では,水道水及び電気を管理組合が一括して供給を受け,料金を一括して立替払した上で,使用料に応じて各区分所有者に分割請求している点に着目し,この立替払とそれから生ずる債権の請求は,各専有部分に設置された設備を維持,使用するためのライフライン確保のための必要な行為であるとして,「特段の事情」に該当すると認定し,規約で公共料金の支払義務を定めることができると結論づけた。
水道料金や電気料金については,区分所有者が長期にわたって滞納を続けている場合,特定承継人への請求が有効であるが,本判決が述べるように,区分所有者相互間の事項と認められるような「特段の事情」がなければ,そもそもその支払義務を規約に規定することはできず,特定承継人への請求も認められないので,管理組合にとっては注意が必要である。



